【ゴミへのこだわり】東京ディズニーランド/シーにゴミが落ちていない理由は?

「なぜ、東京ディズニーランド/シーにはゴミが落ちていないのか…?」

パークに遊びに行ったとき、ゴミが散乱している状況を見た人はほとんどいないと思います。ディズニーランド/シーは、徹底して「ゴミ」を排除しようとしています。園内には多くのゴミ箱が設置され、多くのカストーディアルキャスト(清掃スタッフ)が昼夜問わず常にパーク内を清掃し、清潔な状態に保つように努めています。清潔さの基準は、「赤ちゃんがハイハイしても汚れない程度」と言われるほど徹底しています。

では、どうしてゴミにそれほどこだわるのでしょうか。

①「割れ窓理論」

ゴミにこだわる根本的な理由には、心理学の理論である「割れ窓理論」が関係していると考えられます。
割れ窓理論とは、以下のような考え方に基づいた理論です。

 

「建物の窓が1枚でも割れたままで放置されていると、誰も注意を払っていないことを暗に示すことになり、やがて他の窓も割られてしまう」

 

このような結果になるのは、自分の中で背徳感(後ろめたさ)を感じる行動をとるかどうか迷ったとき、「自分がやってもどうせばれない」や「他の人もやってるし」などと自分自身の責任を低下させるような判断をして、行動してしまうためです。さらに、この「自分がやってもばれない」という心理が拡大していき、より悪質な行動を取るようになります。

わずかな風紀の乱れが、他の人へ伝播して拡大するのを防ぐためには、乱れが小さいうちに取り除いてしまうことが重要になります。それがたとえどんなに小さな乱れでも、です。

実際に、アメリカのニューヨークでは、市長が地下鉄の落書きや軽犯罪を徹底的に取り締まった結果、殺人などの重大犯罪の件数が大幅に減少し、治安回復に非常に大きな効果を与えた、という事例があります。

②ディズニーランド/シーにおける「割れ窓理論」

話をディズニーランド/シーに戻して考えてみます。

先ほどの「割れ窓理論」から考えると、ゴミ1つ落ちていることが原因で、ゴミのポイ捨てが多くなり、いずれは秩序の乱れにつながる可能性があります。重大犯罪とまではいかないまでも、例えば万引きや未成年者の飲酒喫煙など、「見られていないから大丈夫」という心理状態に発展する可能性があります。さらには、それらの行為を注意した人と言い争いになり、周囲のゲストまでも巻き込んで次々に秩序が乱れていく、という悪循環に陥りかねません。

1日数万人が訪れるパークの秩序を維持し、全てのゲストが安全かつ快適に過ごせるようにするためにも、ゴミ1つ落ちていない世界を作り上げる所から始める必要があるのです

これは、ディズニーおよびオリエンタルランドの戦略である「リピーターを増やす」ことに大きく関係しています。リピーターを増やすためには、ゲストの満足度を高め、「また来たい!」と感じてもらうことが重要です。ゲストに「安全かつ快適」に過ごしてもらうことは、満足度向上に直結します。つまり、ゴミを排除することが結果としてリピーター増加につながり、パーク運営側の利益につながると考えられるのです。

しかし、近年はカストーディアルキャストの数が以前よりも減った感じがします。キャストの数を増やせばより清潔なパークを保てるものの、人件費が増えるためパーク運営側の利益は下がってしまいます。近年は、どこの業界でも人手不足で、以前より多くの人件費がかかるようになってきました。そのため、パークもこの影響を受けて、キャストの数を減らさざるを得ないのかもしれません。

③「ゴミ」という言葉を使わない

「ゴミ」という言葉を聞くと、「要らない物・汚れている物・廃棄される物」と、あまり良いイメージを思い浮かべません。そのため、東京ディズニーリゾートでは「ゴミ」という言葉を耳にすることはほとんどありません。

東京ディズニーリゾートでは、ゴミ箱のことを「トラッシュカン」と呼び、エリアごとにデザインの異なるカラフルな外観となっています。(ミニサイズのトラッシュカンが商品化されるなど、人気アイテムの1つとなっています)

また、カストーディアルキャストに「何をしているんですか?」と聞くと、「星のかけらを拾っています」「夢の欠片を拾っています」と、ゴミという言葉を使わずに、夢にあふれた答えが返ってくる場合があります。パレード待ちをしている際など、カストーディアルキャストがゴミを回収に回ってくれるのですが、その際にも「お手元にご不要なものはございませんか?」と、決してゴミという言葉を使いません。

このように、東京ディズニーリゾートではゴミそのものだけではなく、「ゴミ」という言葉も徹底して排除しています。

④あふれることの無いトラッシュカン

東京ディズニーリゾート内には、数多くのトラッシュカンが存在します。トラッシュカンの配置へのこだわりは、下記記事をご覧下さい。

【ゴミ箱の位置にもこだわる!?】パーク内のゴミ箱の配置はどう決まっているのか?

これらのトラッシュカンからゴミがあふれてしまっては、パークの雰囲気が台無しです。そこで、ゴミがあふれないよう、カストーディアルキャストが定期的にトラッシュカンの中を空にしています。特にゴミの量が多いテイクアウト形式のレストラン付近には複数のトラッシュカンを配置して、ゴミの受け入れキャパシティを多くしています。

こだわりの詰まったトラッシュカン。パークに遊びに行った際には、普段は気に留めなかったトラッシュカンにも着目してみると面白いかもしれません。

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